トイビト編集部

プロフィール
2023.12.03

「押しつけられた」という形式が問題だというのであれば、それは、国民投票を実施して憲法を改正するというかたちで、法的には問題は解決します。しかし、そのような議論はじつは、1970年代まで改憲論の主流ではありませんでした。

4. 鼎談【前編】

宗教学

島薗進

だから、「世界内存在」は、「意味内存在」と言いかえることもできるかもしれません。自分が創った「意味」に囲まれて存在している、というわけです。しかし、このことによって、「無」という事態も、登場することになります。「現存在」がつくりだした「意味」によって「世界」が存在しているということは、その「意味」を喪失すると、その「世界」もまた、無くなってしまうからです。「意味」という関係性は、実体的なものではありません。それは、こちら側が、創りだしているものです。だから「意味」は、「無‐意味」に変化する可能性が、つねにあるのです。

現代西洋哲学

中村 昇

PEER

ペストが流行した14世紀、ヨーロッパでは照応(コレスポンダンス)の哲学が広まりました。宇宙空間の星が一つ動くことで、人間界もそれに合わせて動かされてしまう。自然界のできごとと人間界のできごとが直結していることへの気付きです。

芸術文明史、ケルト芸術文化研究

鶴岡真弓

春・夏の甲子園で、自分の出身校ではなくても郷土の高校を応援したり、オリンピックで無条件に日本の選手を応援したりすることに、私たちは何の疑問も抱きません。そしてそれ自体は、別に問題とするようなことではないでしょう。しかしそこに、郷土や国へのしぜんな愛着を超えて、自らのアイデンティティを見出していくことには一抹の不安を感じます。

文化地理学

大城直樹

香港のタンザニア人と暮らしていて感じるのは、彼らが個々の実践や行為の帰結を他者の人物評価――「努力が足りない」「考えが甘い」「やさしさが足りない」など――に結びつけて語ることをほとんどしないということです。もっと言えば、あらゆる行為の責任を帰す一貫した自己など存在しない、と認識しているように見えるのです。

文化人類学、地域研究(アフリカ)

小川さやか

重要なのは、規律による調教の仕方もそうですけど、個人が振り分けられるカテゴリーも時代によって変化するということです。たとえば、精神医学ができる前には精神病者は存在しない。いたのに気づいていなかったのではなく、本当にいないんです。

現代思想、政治思想史

重田園江

松平 「押しつけ憲法論」については、右派が問題にしている「押しつけ」の中身と形式を分けて考える必要があると思います。もしも日本国憲法の中に、大日本帝国を一部でもそのまま継続させるような、とりわけ天皇・軍隊・国家神道という「三点セット」の(マッチョな)「国体」の護持は可能だと解釈できるような条文が入っていたら、はたして彼らはコストを顧みずに改憲を堅持したかというと、非常に疑わしい。

宗教学

島薗進

それと、逆の立場、つまり加害者側にいたとしたら、と想像することも大切だと思います。これはとても嫌な想像だとは思います。でも、このインタビューは日本語でなされて、日本語で文字になると思うのであえて言うと、日本に生まれ育った日本国籍保有者で、自分は日本人であるということになんの疑いも持たずにきた人は、奴隷制下において自分が白人であった可能性について考えてみることが、とても大切だと僕は思います。

文化人類学

中村 寛

PEER

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