序にかえて

学問には新年も旧年もないので、時候の挨拶は割愛して、さっそく本題に入りますと、加藤さんが提示した言葉の「内包」と「外延」、「こと」と「もの」、その概念ならびに関係性については、ノボルさんの解説(補助線)で、うっすらと見えてきたような気もしますが、残念ながら、まだ私見を述べるには至っていません。加藤さんの論考も、「隠喩にしないで提喩で止める」など次回予告に魅力的な文言があって、「直喩も暗喩も詩には必要ない」という個人的(自分勝手)な考えを支えてくれるかもしれないと期待しているので、座して次回を待ちます。一言付け加えるなら、この巴往復書簡で交信している加藤さんが、私の「狂っている」とは対照的に、「ふつうのひと」をタイトルに用いていて不思議に思っておりましたが、論考を読む限り、やはり、「ふつう」どころか、只者ではないことが明白になってきているように思います。

さて、私の担当になる今回の作品ですが、「また、過去の作品か、お前は詩を書いているのか?」と問い詰められそうですが、現状、新しい作品の創作と同時に、過去に書いた詩的文章の再構成・加筆による編集を並行してやっております。詩にも、それを書く年齢によって、思春期、青年期、壮年期、老年期の詩があるはずです。ノボルさんが朧げに記憶していらっしゃる私の思春期の詩を、もう「死」のそれほど遠くない現在の私が書けるはずがありません。私にとって「言葉(詩的言語)とは何か」と問われれば、過剰に好きだからこその、「言語の死滅に向けた殺し合い」ということになるかもしれません。

思春期以来、詩的言語に魅せられて、その愛憎極まる痴情の果てとして、身体から捻じり出されるかのような土方巽の言語世界に行き着いた、私の手によって、白紙に刻まれた文字列は、少なくとも、言葉を用いて、プロットに従って、読者を想定して書かれる「小説」ではなく、もしかしたら、読者を想定せずとも、立ち現れる言語である「詩」でもないのかもしれません。ただ、この「言語との対峙と介入」という特異な言語作品を受容してもらえる言語領域(可能性ですが)があるとすれば、それが「詩」なのだろうとは思っております。

今回の言語作品は、1986年1月、獣医師国家試験(2月初旬)直前に、東大獣医病院事務に導入されたばかりの、色紙大のフロッピーディスクを挿入する初期パソコン(NEC98)を深夜、数時間使わせてもらって、日本語ソフトウェア「一太郎」を用いて、1週間程度で書かれたものです。漢字変換などうまくいかない場合、ひらがなのまま、或いは誤変換のまま、ブラインドタッチのスピードで、ほぼ即興的に、1980-1986年(吉祥寺マイナー、タコなどのライブ活動や東大駒場)で経験した出来事がフラッシュバックのように記述されています(これを最後に、2004年にブログを始めるまで、筆を置いております)。オリジナルは横書き縦カラム(幅20文字)で、眼球視点の移動が要らず、書かれたスピードと同じスピードで読みおろせる形式でプリントアウトされています。オリジナルの即興性とスピード感を毀損しないように、不必要なパラグラフの削除と再構成のみを行い、加筆は行ないませんでした。例えば、スペース(=読点≒改行)ならびに会話の多用など、「吃音脱落体」と類似する痕跡も多々見受けられます。「狂っていく」、「テレパシー」などの用語も既に使用されています。本作品と前回の「幼形成熟体I」が、現在の私の言語作品の特徴・根幹となっているようにも思われます。

幼形成熟体II

膨れあがる街の扁桃

中心性の肥満がはじまる エフェドリンを二錠飲む 頭痛が伝染する 部屋中が揺れる あまい物が好き 定義されてしまった物体 二階から卵を落とすと ひよこの足だけが歩いている白い道 観念が発電される 右よりの傾向 それはきっと頭痛の前兆に違いない 間違った考えを組み立てる 腸のうしろがわに花が咲く 何かが利用されている 「こいつら、食うのが下手だな」「ハトはどこにでもいる」「もうすぐシベリアヘ帰っていくんだ」「ネズミに餌やらなくっちゃ」「飢えちゃう」「飢えたほうがいいよ」「飢えたほうがいっしょうけんめい食うから」「そうね、かわいいもんね」 不連続な光線 破れた皮膚をジグザグに縫い合わせる 他人が深呼吸する 一匹のウイルス 天皇の頭にはえが止まる 温室の中で時間が分裂する 危険人物 霊が体の中で垂直に立っている ダイヤルが一つ回される 自律のスイッチがoff になる 治療は延期される 電信柱の近くに立っている 性ホルモンを撒き散らしている そこからは原因が除去されている 現象のみがはきちらされている身元不明の風が地球の引力に引かれている 魂は月にむかって 1cm 伸びている 屈折率の異なる空間があちこちにある 度の強いメガネをかけた虫が血液を吸っている 化学反応 目隠しされた感覚 内耳が地面に置かれている スパイが紛れ込んでいる 日本海沿岸に物理的力が加わる 足し算される 人力される

冷蔵庫で卵が冷えている

灼熱の赤道を太陽が公転する 事物と現象の合の子 手を抜かれている 神経を電気が走る 構造は一日前に予期される 昨日の風が吹いている 冷蔵庫の中で卵が冷えている 階段状の道 泡立つ愛情 双生児の空間 歯車がまわりはじめる トランジスタラジオ 急に歌い始める 誰も知らない歌謡曲 現在の前後が逆になる 俯いている裸のマネキン 難民の白い手 顔を撫でる 「ラジオ番組で連絡とったの」「ラジオ番組は特定の番組かって聞いた」「いくつなの」「しゃべってる内容がおかしいだけで」「何が目的なの」「もはや恋愛関係といえるような簡単なものではなあい」 「何が目的か聞いてもしかたがないし」「ラジオを通じて話しかけてきた」「そうだったらすごいな」「よっぽどへんなチャス、偶然」「いつもいない人がいた」「それはよかった」 「自腹切ってどうしたの」「どうしたのって、何がどうしたの」「だって涙ぐんでたよ」「まだ十代だぜ」「でもしらないよ」「気持ちの整理がつかないから、手紙に書いて送るって」「頭にあたったらしんでたんじゃない」「でも快感だね」

パクパクするアヒルの口

混乱するラジオ 笑っている 笑った わらったな 短く中毒している 声が代謝される 犬が出血したまま走る 不安定な耳 空間が脱水する 一過性の死 途端に傾向が直線化する リボン ビタミンが足りない不完全な人体 笑いが新生される 夜間の発作 怖い 子豚にちかずくな 白血球がやってくる 暗号 多くの場合 未分化で女に対応しない 子供に近似される 相関曲線 防腐剤無添加の塊 あたまの上に限定している染色された意味 細菌がゆっくり発育する 細菌がゆっくり下降する それは時間に依存している 耽溺している テレビが結晶化している 犬は死んでいる 化膿した指 パクパクするアヒルの口 無関係な電波が送信されつづけている 操作線の向こう側に広がる大脳皮質 十年前の 8mm フィルムが現像される  異常な食事内容 布団の中で人形が眠る はりつけにされた雑草 痒みがとまらない 薬の効能書と化粧品のモデル 冷たい精液を分泌する青い舌 「誕生日だって」 電話はまだかかってこない スローモーションのかかったインコが空を飛んでいる 死んでいる 墜ちていく

同じ時、同じ場所に蘇ってくる緑色のカメ

凍った花に幸福が訪れる 次々に自殺する日本人 地獄を語る神秘の力 新聞が配られる 過去に繋がる中古の夢 日本脳炎の闇 小児麻痺 時々けいれんする言葉の微量な拡散 腹式呼吸 視界がかびをふいている 正しいものの組み合わせ 正義が不活化されている 体中の下水が汚水処理されている 季節とは無関係な憂鬱 かゆい 白い粉 少女が密造される 体中をネコが走り回る 痺れ 同じ時、同じ場所に蘇ってくる緑色のカメ 二股のキノコ 鶏が血を吐いている 狂人がハサミを持っている その思考がもつれる 輸血が必要 「悪いことをした」「今、どこにいるかは言えない」「完全に一方的な片思いだからね」 「失踪したよ」 「知らんかった」「ラジオに政治的メッセージか加わって」「ラジオ局と連絡とっている」「考えすぎなんじゃないの」「今に君のほうがりょうき事件で有名になるよ」「そのうちラジオの音がきこえてくる」「電車で行くのは小学生がおばあちゃんにあいにいくみたいで嫌だ」 不眠症のカエル 映画が始まる 毒の混じった化学物質をくわされる 死亡診断書 第二の命を輸入する 誤りはない 命は交換される 脳軟化が起こっている 有害な寿命の伸び縮み 一人の人間が多くの人間に交換されている 誤りはどれか 赤血球が空気に充満している 危険な信号が鼓膜を震わせている 悪い病気が流行る前に「ブタのダンスは遺伝する」 てんかんがちかずく 事物の二面性がかいりする 「私」に汚染された地下街 遠くで星が爆発する 地下を走る風 電信柱に魚が縛られている 誰かが暗号を作製する 畳の下に隠された日本地図 畳の目を数える 人の焼ける臭いがする 魂の分化 裸の神経が震える 近くで死者の声がする 月を見つめすぎてめくらになっためくらが歩いている 星から風が吹いてくる 笑いがこだまする 大気中の酸素が欠乏する 人間の中から痴的な虫がしみでてくる 原体験のない子供が母乳をすする 血液が沸騰する まんじゅうが時速を持っている 北をさす指 

トリとカメが同じ軸を中心にしている

右の頸静脈から昼が 左から夜が注入されて 小脳のあたりで混ざりあっている 一千年の吸気 肺がパンパンに脹れあがる 成長ホルモンが流れ込んでいる この結果は意味している けだるい音が筋肉の中で発酵している 百年が過ぎる今 さらに千年 トリとカメが同じ軸を中心にしている 色が欲しくない 総天然色 生まれ変わる 伝説のしゅうえん テレビのシリーズものが今日も始まる 一本の血管が抽選される くさい腐った魚が血液の中に浮いている 魚のえらを通して呼吸している 魚は体の深い所へ潜水していった 犠牲者達の狂宴 事故が連結している 天気予報 細かく衰えていく健康 緩慢な脱分極か始まる 両極の機構 空席に水が溢れる 意味のない予防接種 降神術 子午線から離れるアザミの花 卵が割れない 交感神経性の興奮が遮断される 狂った年賀状 合言葉の欠如 水玉模様のスカート 精神病院の昼飯会 新聞を読み耽る「最近、薬の量が多くって ごめんなさい ろれつが回らないでしょ でも グングン慣れてきてるから。成人の日に失敗しちゃって まだ一人で外にでれないの 別にそんなんじゃなくて量を少し多く飲みすぎただけなんだけど 先生におこられたわ ひさしぶりにどうしてるかと思って 私もまだいきてますって すごい元気なの 今日はいろんな人に電話しようと思って十円玉いっぱい持ってるの」 何千枚のラブレター 蛾が停止する 読み書きができない 「文庫本買ってきて頂戴」 会話がインコの舌から再生される 過去形の光 事物の縫い目がほどけてくる 一枚の皮膚  「薬物がくっついて離れないのよ」 立体的な霊感 知性の粉末 煙たい 精神病院に狼煙が上がる 赤いものがチラチラする 暗号は解読されたらしい ラジオが玉音放送を始める スピリチュアルな声帯 ビルビル震える インコのくちばしを取り付ける コップに水がつがれる 潜在的な雨が降る 全都市の停電 過酸化水素水で髪を漂白する 終身刑 年金 元素の周期律 脳神経の定期検査 終止符は打たれる 男の体は腐敗しやすい傾向にある 賛美歌 貿易風 悲劇的な交信

水栽培される豚の足

風化されない魂 舌が回らない 会話は成立しない 擦れ違いざまに刺せ 刺し殺せ 電波が飛び交う 次元装置が動いている 毛が抜け替わる 細かい毛が充満する ウジ虫が進化する 太陽の表面には転々とケシの花が咲いている 指揮者がけいれんしている 花粉がまっている 意味が分解されている 彼女は布教活動をやっている 網膜に光があたる 嫌気的生物活動 時計のネジをまききる 胎盤をかじる新生児 日の丸が振られる 差し上げられた両手が何かを掴む 保護色 エゴンシーレ感覚の人物 録画される水銀の原子番号 鳥が低空飛行する霊感の迷路 「あいのこでしょう」「何を話してる」「何か言いなさいよ」「早くしゃべりなさいよ。そこでマイク持ってさあ」「はい、どうぞ」「みんな待ってるじゃない」「パチパチ」「学芸会みたいに恥ずかしがらないで」「みなさん、何、おまえがぶちこわしたんだ」「なに、ぼくは ぼくは」「おまえひとこと多いのがわたしにうつっちゃったのよ」「コーヒー飲んだし」「あとはギターを弾くばかり」「裏声にしちゃうのお」「たまんないわ」「あんなに寝てるくせに人間じゃないわよ」「胃下垂なんじゃないの」「あーあ 音楽ってこういうものかなあ」「まだ動いてる 嫌だあ」「今よりパオーパオーとかやってたほうが」「アクシデント起こしてほしいわけだ」「庭にバラか咲いたとかさ」「あれっ違うの?」「それはだからさ」「名前がにてるから全部同じなの」「個別性がない」「も−その通り」「ノイズが」「あー」「使い捨てマイク 思う存分に使う」「何かアクシデントないと 暴カ 家庭内暴力ってあるでしょ 何かふるってよ やってよ」「何すんの、逃げないよ 向かっていく、ヒッヒッヒヒ ヒッ なぐってくれ」「だるい」「声がわたりてつやみたい」「だるい」 見ず知らずの他人に声をかけられて 体中の血液の赤血球が音もなくはじける 街の空に赤血球が浮かび、回遊し、末梢血管で溶血する それが赤い雨となって降ってくる 機械的に時間が過ぎる 無感覚の疾病の空白 無限の言葉が幼児の口に詰め込まれ 幼児はおしになる「仏像に名前をつけて飼っている」漬物にされた仏像 顔面に血管が浮かんでくる 人相 卵分割された生命 人体から空気が抜けている スッスッと横に流れる 都市の空が散髪される ごみばこに捨てられた乾燥したシナプス 観念の砂漠 観察を中絶する ひとつふたつと数え上げなければならない 鱗でビシュッと切り裂く 不感症 ゆるやかな拒絶 目をキョロキョロする 豚の足 傷口に咲くはすの花 20 のスイッチをもつピアノ うっかりしていると卵がかえってしまう 卵がかえる前にけんざんする 時間が培養される メトロノーム中毒 パトカーの音 位相の異なる音の中にはいっていけ 脱ぎ捨てられた衣服 必然性のない直感が走る 排気音 禁断症状 第六感とは時間に対する感覚のことである 「静けさや むしずが走る 丘の上」 背後霊を背負って 四肢の関節を外し心に入る 会話脈絡がはずされている

女が眼鏡をはずすと話が通じなくなる

手紙が届く 銭湯で沈黙する 墓地へのピクニック まだ誰も知らない はちゅうるいのsex 空集合 一日の中の一秒が消失する グルグル回る バイオリンがばらばらになって音にちかずく レセプターに結合する とさかをつけて歩く子供達 彼等に考証が微分される 寿命がつきる 統計学 女が眼鏡をはずす 話がつうじない 右左 境界がはっきりしない 思考が液体に溶けている 細胞が生まれる 生まれなさい 生まれなさい 共感のない世界 接触のない 孤立した指が方向をしめしている たてつずけに爪が伸びる 新しい遠心力 言葉じりに差し込まれた 希釈されたピアノの打撃音 伝言が伝わらない 皮膚の下のだるい指の動き 包まれている眠い感覚が指へ届く 点滅する過去 レム睡眠 自転する トイレット ペーパー 方程式は右から左へ 冷蔵庫のスイッチが入る ライターの火 壁面のポスター 誤差の中へ ひびわれ 砂浜に打ち上げられる 死体 じゅうたんに混ざる陰毛 脱水された愛情 不変の温度が漂う コードが伸びる 後躯麻痺のカメ 煮沸する 消耗するテレパシー トイレに腰掛けたまま 成仏している 少年の体にタコの血が流れる 息を吹き込む 曲げられたスプーンを持った夢遊病者 寝言を録音する ギョロ目の少年にお姉さんと呼ばれて 貧血する空前絶後 ガスメーターが音をたてる

マカオで賭博しフグにあたるパーキンソン病のヨダレ女

水がアスファルトの上を逃げていく 日章旗をかかげる 真実に二通りある 不断着のままで マカオでとばく 日輪がグイグイ伸びる 知能のカタログを取り寄せる フグにあたる 水晶体が緑色に曇る ギザギザの水 濃度勾配にしたがう パーキンソン病のヨダレ女 蝶が麻酔されて空中にはりつけられる 笑気が渦巻く 性的興奮が解除される 解禁される 糖尿病のイルカ あめふらしがヌルヌルする サイキックなはぶらし運動 ハアハア デスコの盲導犬 狂気の円周率 それはきれい 道端で卵を生み付けている少女と同一人物 慣習が取り外された日常 球形の眠り 土人がたいこをたたいている 命懸けで眠りつずける縦と横 イヤリング マニキュアの指に 指先が続く 名前が思い出せない ガラガラ回るメリーゴーランドの馬 水族館のあり地獄 田圃が一面に出血している 百姓の物理 南に向かって走るささくれだった止めたはずの流行語 都会に生育する心身症 21世紀の降水確率は変化しない 偽造されるテキサス 疑似体験 ストローでチュウチュウしたい 陽極と陰極が溶け込む円の中心

副作用の都市

副作用のネコ グルグル喉をならす がぢがぢの凝固 心臓の鼓動が一回欠ける 転調する 影が複雑にはりついた 激痛が皮膚から吹き出した 暗い光 単調な じぎゃくてきな 遺言は残された 内面に死斑がでる 背中の逆三角形のあざ 暗流する不眠症の都市 いわしが回遊する どえらいことがおこる 保健をかける バイリンガルの少女 不定期な脱力 入門書がばらばらにされて操作されている ヘソの尾 焦点があわないイヌにかまれる 採血される 不安がくもの巣に引っ掛かる ハエ叩きで叩きつぶすしかない 吹き替えられた神様の声 水溜まりを越えるウサギの耳 時間がゆるい 強力な寄生虫が月からやってくる 極彩色の沈黙 うえつがれる価値観の内部 歯がぼろぼろぬけおちる 飯たべてますか 不条理な笑いがミカンのかわをむく 魚の足をした天使 静脈を見せる鋭角の街路 波動のみが存在する 常軌を逸した三人分の昼食 鉛筆を削る薬物中毒者 脳の中の空洞で足のはえたヘビが2 回いじめられる 二等分された磁石 人工心臓 物事には手続きがない 性欲 たろうは泣き笑いする

桜に菊が混入している

口述筆記される手話の世界 麻薬犬 コロリ病 蒸留水を欽むタコ足配線 春らしい 風土病 気か弱くなる ただで名前をつけてもらう シャッターかギトッとおちる 象徴的な腹痛 かぎのかからない顔 二分の三拍子 全体性の存在しない レントゲンフィルムが現像される 黒板に書き散らされた数式 ダンボールの中 変身するDNA の断片 癌化する風景 昆虫の触角をもぐ 値切られた生まれつき 何のこっちゃ 何のこっちゃ 待機するさびた注射針 放射能に汚染された体 せっけんでこする グルグル回る夜と昼 ピンセットで米粒をつまみあげ ジャガタラのテープがギュルギュルうなる 腕時計の文字盤 カレンダーか破られる 異常生殖 ガイガーカウンターがガーガー 蒸留水を欽むタコ足配線 桜が満開 狂気の花 菊が混入する 消費者 活動家を捜せ デジタルの視角 味覚 脳神経に支配された 6 時30 分29 秒 右の眼球が眠り始める 左の前眼房に針が挿し込まれ 整理された指紋 お守りを解体する 名刺 ぬいぐるみのクマ コドモダマシ 印字されるふなの踊り 薬が全身に拡散する ネコに咬まれる発熱する子供 おとしよりとはいえ操縦不能のイヌ 頭が悪い女の子が生まれる 放課後のサイレン 聞き間違い 勝手な

電池の切れた小指がはいまわる

ザクザク花が咲いている 悲しい 真空管の焼ける音 出来上がりが陳列されている 上昇気流 言語的に遠い 言葉の裏に染み付いている 青葉に陰に血まみれる 三角形の太陽 名前負けした死体にハンコをおす 遺伝子が治療される 舌が出てくる 胎児がひねりだされる 暴発する弾丸 テロリストの口が開く 本物がつまるところ 遠近法の混乱したモデル 朝顔に水をやらなくてわ 連続性の滝 再現性の欠けたまんげきょうの中に血を吐く 頭ごなしの否定 内的距離を保て 結婚したら女の頭部が浮遊してくる ある形が欠けている 省略された関係 何一つありはしない 大腿に陰部が接合する現場で新人が収縮しきる 乾燥する女体 偶像を崇拝するきっかけが分類される 一枚の鏡像体 射精するアイドル 朝のラジオ体操で狂った男が包丁を振り回す 手のつけられない知的な固体の時代 世代交代の激しい死体にキノコがはえる 思い詰める花屋の天使 おとりの花 傷だよ 傷 くだかれた歯が生える土地 不毛の地下 冬眠する第三脳室にウジがわく 電池のきれた 中空の正二十面体が盗聴している 唇を読み取られる 唾液の過剰分泌なぞの中 なぞは解けない なぞかける 石油をゴクゴク飲む 終末の大仏 魚の骨をえり分ける 病人は治らない道を遠まわりする 腐ってくテレパシーズのシグナルが転送されている 刑務所で時間が道草をくっている 出会を慎重に回避する 進行形のデイープキス 超音波が流れる 思い出におゆをかける 黒のストッキング 「知ってるう クリソツのおんな」「あいかわらずね」 小指がはいまわる 声が糸を引く マユを作る 蛾がふ化する 振り付けられた いなか者はばかをみる アレが存在する 論理に血縁関係はいらない 脅迫する 在位 60 周年を祝う

重くて飛べないトリ

等身大の鏡がうめこまれた 馬を原子力発電する 調律してください もちをくう一匹のおたまじゃくしを追って 殺虫された魚屋ワルツ その場で足踏みしている 砂場で保護色を使うのは誰だ 心の夏至へ箸を突き立てる 頭がい骨には穴がプスプス空いていて局所的な快晴 梅雨が始まる この暗号をすばやく身につける おたまじゃくしのどこかが重なっていて 雨上がりには虹がかかったりする 砂糖の過剰に溶けた風景で 血が薄くなっていく 目の前で手を合わせる二人の老人夫婦が合成される場所 言葉を覚える口がある 窓ガラスにひびが入ってくる 平和が血溜まる傷口に塩を刷り込む 液体は生物を飼う 献血する第三者 改行している私事 地団太踏んでも遅すぎることが周囲に配置されなおされてかたくなな心に水をかける暇がある 後ろにくんだ手のひらの中にその男の本質が握りしめられている 太陽に向かって透かされたてのひらに正気が整列している 声が細胞分裂しているのか 気が遠くなりそう 帰らなくっちゃ 欲望が消煙されている 右は裸眼で視力が 1.2 「わかりきったことばかりがつまっているから笑えない ことに渦巻き状の迷路の中心に餌がおいてある 考えようとしても何も考えられない せめて眠る前に自由になりたい これが習性になっているので電信柱に忍び込んで警戒しなければならない 電話が切られてしまう日も近い 電話線をほどかないと口の中で電気になる 肺の中でネコが急激に毛を生え変わらせるから肺がまっ赤に脹れて 肺が風船みたい かくとますます痒い 世界を再利用せねば 電話帖を取り寄せてすし屋に出前をさせる 食欲はほとんど片手落ちで短い感情を山分けにもできないくらいだから喜びが知りたいとか悲しみが知りたいと神にかたく誓っても 一回の欲望を一生の間利用しつづけるということは不可能だ」

原爆床屋で石油を飲みたい

脳神経が断線する 過剰な電圧がかかっておはようと喋れない 自転車屋でポンプを借りて空気を送り込む 冷蔵庫のサーモスタットが突然きれる 「キャベツは食べてあげるけどね」 同じことを何回も言う つけっぱなしのテレビ 体験がないと笑えない かものはしみたいな顔の写真をとる 断続的に砂の御飯おいしい 過去を一つ付け加えて時間のボリュームを右へ回す 感情が振り切れてしまい電話をかけても誰もでない コールの音が響く 受話器をとらない 帽子が飛んでいく 刻印された影 人相がはずれる さよならの合図 回転の狂ったテープレコーダー 石油を飲みたい エプロンをつけた娘 句読点をつけられた歌手 自白したい 幻覚のみる 子供が突然つんのめるように倒れる 閉まっていたはすのドアがスルッとひらく 早回しで時間が病んであちこちに虫くれかでき 虫歯のような痛みが走っている くちばしを顔に取り付けてあわをくうんだ 蘇生する北緯 31度線 喉から手が出ますか

ひらがなでいいですから伝言してください

証拠一つない関係の殺人現場 単細胞を連行する 「じゃんけんして負けても退院させてくれない」 「それじゃ刺激するからだめよ」 黒点が頭の中に増えてくる ひとつ ふたつ みっつ よっつ 「きのうより元気がないみたい」 イヌが吐く 錠剤の破片が出てくる 雨に濡れる扇風機 歌を歌いながら歩いている 小鳥屋のインコが寄り集まっている 取り調べ室の話を思い出す 誘導尋問はやめてくれ 体の端から端へ悪寒が走る 漢字の書き取りがしたい 宇宙人みたいな顔をして地下鉄の吊り広告をかたっぱしから読んでいく 音と絶交する巻き舌を使う宇宙人 新聞記事を切り抜く左右が逆の画面 きんたろうのような髪をした女の子 「味の素が食べたいの」「この手袋は君のだろう」 イヌの鳴き真似をする 形態模写とも言うな 約束は遅れの中に半分きえかかって存在する ネコババ 夕日に向かって虫のように集まる恋人達 金魚色の空を飛行せよ 本名を忘れてしまった「原爆」というあだ名のわたし ことりの足の指を数える 3 本しかない 有機物の月 論理の代わりに物理を使う 防水された肉体 あっちいけ あっちいけと鳥が鳴く

たんぱくしつの家

人間の出がらし たんぱくしつが歩いている 砂の詰まった心臓 よだれをたらす脳 へりくつをこねる 義眼を入れ替えて 人形を刺身にする ウラウラする二本の足 組織が関係している 八百長する 知性が手入れされる 未遂の馬 あなたを傷害する白いイヌ 骨抜きにされて泡をふいている入れ墨 観念が押し花にされている 仏にせまる高級な茹で卵 命を速記する 近視の死者の水晶体 床一面にメリケン粉がふちまけられ、そのうえで、男が転げ回っている 黒ずくめのコンピュータープログラマーがサックスに脅えている 狂い始めた夜 魚の頭が無数につまった乳母車にひとりの気違いがはいりこんでいる ゲロを吐きころげる男達 オカルティストがギターを壊す ピアノの鍵盤をもぐ 狂ったタコの世界 もうやめようよ ボロボロのトラッシュ 世界中のどこにも存在しない半音階の一画 右回りに狂い始める女達 ラリッた男が震えてる うじ虫達の巣 終わりがない歯ぎしり マイナーの真実 糞を焼く 宇宙人の身の上話 切り取られた手首が這い回る それは誰の指だ 二重に空回りする 音が体を震わせる 内耳が破れる 毛穴が開く 神経が部屋中に伸びる 「仏像、仏像、退屈、退屈」 宇宙人の声が大きくなる 頭が溶ける 田植え 剰余価値分解工場 黄色い痛み 収縮する大脳 テレパシーが使用されている 幼虫が変態する一秒 うるう年の荒廃した風景 壊れた機械がギコギコ動き続ける 千切れたコード 筋肉の自己消化 無性生殖する 過疎 ひびのはいった人体 道の曲がり角に立て 吃りの歌手 その歌手は右手をゆっくり上げた ガセネタの音 二度と始まらない音楽 毛穴から虫が這い出してくる 螺旋系 超小型の音が人の形に揺れている 鳥が記号になって焼け落ちる 霧箱の中の基線 偽物と本物がぐるになっている 視線が付着する 網膜に鳥の足跡が残る 月がジグザグ゙に動く 折りの時刻 子供の手の中で眠る 首が曲がる つむじが曲がる そろばんをはじく 詩的言語の根絶をめざす 子供の文字体 消印のない 巻きこまれる 子供は作り直される 保管された暗帯 ヤマがはずれる 隠語を使う 信号機の赤 タイマーがセットされている 記号化されない寝言

動く刺青

乱雑 夏 気の線 紅顔が冷やされる 孤立 全滅 何か冷たい物が飲みたい ずるがしこいアリゲーター 内包されないデタラメの音 気の触れた三度目のトリップの正直 頭が痛い 痛く無い 同じことを繰り返している 気の遠くなりそうな午後 蟻が列を作って耳の中にはいっていった 頭の中の蟻の巣で疲労していた 蟻は鼻の穴からもはいってきた 誰も腐り始めた昨日の記憶から抜け出せない 蟻は催眠されて記憶物質に置きかえられていた 脱落したもの 脱落は継続している それがどうした ただ何でもよい だるい 眠い 眠れない 振り切れている ブレーキをかけたままアクセルを踏みつけている 過剰な静止 加速された静止 喉笛に 窒息のサックス バケツ一杯の沈黙 細い足首にいけ花 どすのきいた オクターブを越えている 奥歯を噛み締める 一回きりの悪夢 360 度の視野の中に十字ができる まにあわない 目がまわる 死期を計算する 死滅した日光は光合成を拒否する 金魚鉢を買った 金魚鉢が割れた 金魚を買った 金魚が死んだ 眠い眠い 瞳を閉じない魚 透明な冷却 ブヨブヨの女 ネガティブな光が降りそそぐ こう門の周囲は今日も出血している 単音の夢 みない 息を止めたまま空気が焼けこげてアスファルトの上を這いまわっている トラシュの階段を二段降りる 一段上がるタンゴのステップ エセ学者は天然記念物の女を連れて歩く 茶柱が立つ頭の中 ビニール袋に包まれた 青空一面の 視力が回復する 奇跡 音が急激に空間から一本ずつ抜き取られていた 抜け落ちた空隙に坊主の頭がゴリゴリした 直進しない時間 死角が形成されている 錯覚と幻覚 空気が物質にはりついて離れない 触れるけれど見えない 間違いなく静脈を捜しあてる21ゲージの注射針 非公開の歯 時間が巻き戻されている 気持ちがいい心臓マッサージ 体重計の上で育つ子供たち 横倒しのテレフォンボックス 時間恐怖症 測定障害 仏壇返しの海「水の中で眠れることはわかっているけどカメがきになる」「人間は外側に向かって深くなっているわけで やっぱり横断歩道は手を挙げて渡らなくてはいけない」「中毒量じゃなくて致死量の薬を飲んでる」「人体実験だね」「花火を見にいこうよ」「俺の言うことを聞け」「薬がきれる」「赤信号がティカティカして」「生まれた時から右左の区別がつかなかった」「漬物石を頭乗せて雨が降っている」「教科書どうりだろう」「時間にマヨネーズをかけて食っている」人工三重苦のヘレン・ケラー 神経質なサリドマイド