科学と技術
池内 了

現代は「科学技術文明の時代」と呼ばれる。通常は、科学の発展によって開発された技術が現代文明の根幹を支えていると考えるからだ。その意味で、「科学技術」と呼ぶのが当然のように考えられているが、実は科学と技術の内実は根本的に異なっており、従って人間の営みとしても異なっている。「科学は物質と独立した形而上の概念である抽象的な原理(や法則)」のことであるのに対し、「技術は科学が発見した原理(や法則)を具象的な自然の事物(物質)に適用して人工物を製作する」ことである、という根本的な違いがある。このことを踏まえて本稿では、科学と技術が辿ってきた道筋とそれぞれの近代化、この先の展望について考えてみたい。(全3回)
この連載はアジェンダ「近代化とはなんだったのか」と紐付けられています。
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1. それぞれの出自
英語のscienceの語源は知識全般を意味するラテン語のscientia(スキエンチア)であるとされている。明治時代にscienceという言葉が輸入されたとき、最初に提案された訳語は「窮理学」、つまり自然物一般の原理を窮(きわ)める学問という意味であった。しかし、19世紀中ほどのscienceの中身は、既に物理学(p