【 ギリギリのひと① 】
(クライエントからの手紙)
タムラさん、お元気? わたしは現在はオーストラリアにいます。夫と一緒ですよ。喧嘩しながらも味わいある毎日です。安心してね。
お手紙するのは5年ぶりです。あの後、夫とアメリカに行ったので、タムラさんにはずっと手紙でカウンセリングをしていただいて以来ですから。
あの日、初めて相談室を訪れたとき、わたしはボロボロでした。
ボロボロのわたしに施してくださったのが、フォーカシングでしたね。
8年付き合った彼に捨てられて、苦しみのあまり死ぬこともできなかったわたしに、徹底してわたしのからだにフォーカスしてくださったタムラさん。
「おなかが苦しい!」
「鎖骨が熱い!」
「死んじゃう!」
と叫んでいたわたしに「名前をつけなさい」と。
「『マグマちゃん』と名付け『大切なマグマちゃん、今はわたしから離れてちょうだい。必ず迎えに来るわ』」
わたしはマグマちゃんを鉄のバケツに入れ、蓋をして地中深くに埋めました。大きな岩を乗せ、鉄のチェーンでぐるぐる巻きにして、やっとわたしは安堵しました。
それから半年のカウンセリングを受けて、間もなく職場結婚。アメリカに赴任する夫に一緒に付いて行った。今はオーストラリアです。
そして夢を見たんです。夢の中で夫の車に乗ってまっすぐな、まっすぐな一本道を走っていました。行く手の地平線に大きな山の頂きが見え始め、近づくと巨大な『エアーズロック』なのが分かった途端、わたしは夢の中で、両目から涙がふきだしていました。
エアーズロックには、鉄の鎖が巻き付いていたんです。
「迎えに来たよ。マグマちゃん。ありがとう」
※事例は特定されないことを条件に教材にすることの許可を得ています
2023.03.29