人は白紙で生まれてくる。あらゆる知識や観念はただ経験のみに由来し、生まれながらに心に刻まれた文字など存在しない。デカルトの生得観念(生まれながらに持っている神、自己〈精神〉、数学などの観念)を真っ向から否定し、近代経験論の礎を築いたジョン・ロック。後の自由主義や民主主義にも大きな影響を及ぼしたその思想の核心を、中村昇先生がやさしくひも解きます。
思考する一節
そこで、心は、言ってみれば文字をまったく欠いた白紙で、観念は少しもないと想定しよう。どのようにして心は観念を備えるようになるか。人間の忙しくて果てしない心想が心にほとんど限りなく多種多様に描いてきた、あの膨大な貯えを心はどこから得るか。どこから心は理知的推理と知識のすべての材料をわがものにするか。これに対して、私は一語で経験からと答える。この経験に私たちの一切の知識は根底を持ち、この経験から一切の知識は究極的に由来する。(『人間知性論』)
