「語りえないものについては沈黙しなければならない」

誰もが一度は耳にしたことあるこのフレーズは、20世紀を代表する哲学者・ウィトゲンシュタインによるものです。ではその「語りえないもの」とは何なのでしょうか。

言葉にできない感情? 墓場までもっていく黒歴史? それとも……放送禁止用語? その答えは私たちの想像よりもはるかに厳格で、そして静かなものでした。

ウィトゲンシュタインの数奇な生い立ちから、その後の哲学・論理学におよぼした影響まで。

ホストの無茶ぶりにも応える中村昇先生のやわらかな語りで、この「イチ語」を味わってみませんか。

思考する一節

私は、ハイデガーが存在と不安について考えていることを、十分考えることができる。人間は、言語の限界に対して突進する衝動をもっている。例えば、あるものが存在する、という驚きについて考えてみよ。この驚きは、問のかたちでは表現されえない。そして、答はまったく存在しない。われわれがたとえ何かを言ったとしても、それは、すべてアプリオリにただ無意味でありうるだけだ。それにもかかわらず、われわれは言語の限界に対して突進するのである。(ウィトゲンシュタイン「ハイデガーについて」『ウィトゲンシュタインとウィーン学団』所収)